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(9) 船側では船舶レーダーの場合と同様に、海上監視レーダー映像(生動画像)の利得、或いは輝度を変更したい場合があるが、これには対応はできない。

 

以上の考察結果から、海上監視レーダーの生映像と人工合成映像を動画像として、船舶で利用するには実現に大きな困難を伴い、経済性を考慮すると船側のメリットはほとんど無い。本システムが船舶側が現に保有する通信手段を利用したPC通信、FAX等で静止画像を提供して操船援助情報の提供に利用することは、経済性の面から見ても有望である。

 

2.2 レーダーシステムの概略仕様

レーダー装置の概略仕様を検討してみた。このレーダーは気象条件の影響を受けないように周波数は低いほど良い。すなはち、Sバンド(波長10cm)かCバンド(波長5.6cm)のいずれかを選択する事になる。

テイラー分布等、低サイドローブのアレイアンテナを仮定すると、計画サイドローブレベルが−25dBの場合、ビーム幅θb(deg)、アレイの全長L(m)、波長λ(m)の間に概略下記の関係が成立する。

この式に数値を入れて試算すると、ビーム幅O.25度で、Cバンドでもアレイ全長が約14mになり受け入れがたい。ビーム幅0.5度ではCバンドでアレイ全長が約7mであり、実現可能であろう。アンテナ回転数を10rpm程度にすれば、アンテナの総重量を1,000kg程度に抑え得る。SバンドではCバンドに対し、波長の比だけ長くなるので技術的、経済的に不適当である。

アンテナは海面上なるべく高い位置に設置したい。幸い本システムの対象海域にある灯台は多くの場合海岸段丘の上にあり、地面の海抜高が高いものが大部分である。ちなみに、海面に対する見通し距離を24浬(44km)とし、必要なアンテナ海抜高を計算(ICAO:International Civil Aviation Organizationの標準大気仮定)すると114mとなる。

レーダーシステム性能試算は、IALAのVTS MANUALに例示してある船の中でもっとも小さなもの:全長6mの木造船で、レーダー断面積(RCS:Radar Cross Section)6m2:を使用する。

 

レーダーの繰り返し周波数は、二次のエコーを避け、通常Cバンドマグネトロンの最大衝撃比が0.0005程度であることも勘案して、1,000pps〜2,000pps程度になる。仮に1,500ppsとし、海上交通センターと同じアンテナ回転数の場合、アンテナの一回転当り目標を叩くパルス数は12.5となる(FAX等静止した人工合成映像を送信すると仮定しているので、動画像送信の場合のように船舶レーダーのアンテナ回転を考慮する必要ない。アンテナ回転数は10rpmとした)。

 

 

 

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